Drupal 9.3.0の新機能と新テーマの正式対応、CKEditor 5の実験的対応

井上賢太郎

2022.01.18

2021年12月8日、Drupal9のマイナーバージョン、9.3.0がリリースされました。
リリースノート：https://www.drupal.org/project/drupal/releases/9.3.0

今回のリリースで追加された機能

今回のリリースではCKEditor 5の実験的なサポートと、新しいフロントエンド向けテーマOliveroが安定版バージョンとして正式に利用可能になりました。

安定バージョンとして利用可能になった新テーマOlivero

新テーマOliveroはDrupal 9.1.0で試験的に追加されましたが、Drupalコミュニティによる開発の結果、今回のバージョンより安定版としてリリースされました。

新テーマのイメージ

現状は従来のデフォルトテーマBartikとOliveroが共存している状態ですが、将来的にはOliveroがデフォルトテーマとして採用され、Bartikから置き換えられる予定です。
なお、現時点ではOliveroはサブテーマ作成に対応していませんが、将来的には正式にOliveroをベーステーマとして利用したサブテーマの作成に対応する予定です。

CKEditor 5の実験的なサポート

Drupal 9.3.0には実験的にCKEditor 5モジュールが含まれています。
CKEditor 5はUXおよびアーキテクチャが改善された全く新しいエディタです。

新しいCKEditorのイメージ

Drupalコミュニティの開発チームはDrupalにCKEditor 5を実装する過程でCKSourceと協力しながら、全般的なHTMLのサポートやCKEditorプラグインを動的にロードする方法など、Drupalサイトにとって重要な機能の開発に注力しました。
また、CKEditor 4からの柔軟なアップグレードを提供することに特別な配慮をされています。

CKEditor 4を前提に開発された多くのDrupalモジュールは、CKEditor 5にまだ対応していません。
しかし、Drupal 10はCKEditor 4に非対応予定のため、新しいモジュールの導入を検討することをお勧めします。

コンテンツ編集者(Content Editor)ロールが標準プロファイルに追加

標準プロファイルにコンテンツ編集専用のロール「コンテンツ編集者(Content Editor)」が追加されました。
このロールにはデフォルトで以下の権限が有効化されています。

コンテンツ編集
メディアの管理
翻訳
コンテンツワークフロー
リビジョン編集

開発者のための改善

エンティティバンドルが、ビジネスロジックをカプセル化した独自のクラスを宣言できるようになりました。

バンドルクラスは、\Drupal\node\Entity\Nodeのようなベースエンティティクラスのサブクラスである必要があります。各バンドルに必要なすべてのロジックを独自のサブクラスにカプセル化することで、より明確でシンプルかつ保守性とテスト性を兼ね備えたコード開発を実現します。

各ロールの権限は、権限を提供しているモジュールに依存するようになりました。これにより、モジュールがアンインストールされた際に、パーミッションが自動的に削除されるようになりました。詳しくはこちらをご覧ください。

https://www.drupal.org/node/3193348

Drupal 9.3.0は最近リリースされたPHP 8.1.0に完全に対応しています。Drupal 9.3.0をインストールするための推奨されるPHPのバージョンはPHP 8ですが、PHP 7.3以上のサポートは維持されています。
開発者による改善や変更の詳細については、drupal.orgのリリースノートをお読みください。

drupal 9.3.0リリースノート：https://www.drupal.org/project/drupal/releases/9.3.0