DrupalとWordPressを色んな観点から比較検討!

モチヤスタッフ
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無料のオープンソースCMSとして有名なDrupalとWordPress。
サイトを立ち上げるときに、どちらを採用すればいいか迷われる方もいるのではないでしょうか?

今回はDrupalとWordPressの共通点や違いについてまとめます。
違いが分からず迷っている方や、「よくわかんないけどWordPressの方が有名だからいいんじゃないの?」と思っている方はぜひ読んで参考にしてください。
 

 

DrupalとWordPressそれぞれの概要

DrupalもWordPressも利用料は無料で、使用技術は「Apache」「MySQL」「PHP」です。

どちらも無料で使用技術も同じですが、コンセプトが大きく異なり、それぞれが全く違う路線に成長しています。
 

  Drupal WordPress
利用料金 無料 無料
使用技術 Apache / MySQL / PHP Apache / MySQL / PHP
公開時期 2001年 2003年
原型 掲示板用ソフトウェア ブログ用ソフトウェア
シェア率 1.9%
(ただし、大規模なサイトはDrupalの方が多い)
64.4%
(個人ブログなどにも利用され、広く普及している)
機能の拡張 モジュールで拡張 プラグインで拡張
編集画面 WYSIWYGエディタ
(CKEditor 4でDrupal 10からははCKEditor 5.0)
ブロックエディタ
(WordPress 5.0より前はWYSIWYGエディタ)
多言語対応 標準機能 プラグインの「WPML」などを利用
(将来的には標準機能として実装される予定)
キャッシュ機能 標準機能 プラグインの「WP Super Cache」などを利用
自動アップデート機能 対応
(セキュリティリリースの自動アップデートに対応)
対応
(各プラグインに対して個別に設定も可能)
承認ワークフロー 標準機能 「レビュー待ち」などのステータスが用意されているレベルで最低限
セキュリティ モジュールのセキュリティチェックを含め対策されている プラグインは各作者に委ねられている部分が大きい
アクセシビリティ W3Cガイドラインの準拠を保証 現在アクセシビリティガイドラインのハンドブックを作成中

 

Drupal

Drupalは2001年に「掲示板用ソフトウェア」として公開されました。

その後はアップデートを繰り返して「SNS と多言語に対応した多機能 CMS」となり、2012年に方向転換をして現在は「大企業とプログラマに向けたCMS」の位置付けとなっています。

その位置付けの通り、大企業にとってあると便利なユーザー権限機能や承認ワークフロー機能が標準で用意されていたり、セキュリティに力を入れています。

実際に大規模なサイトではDrupalの導入事例が多くなっています。
 

WordPress

WordPressは2003年に「ブログ用ソフトウェア」として公開されました。

「みんなのためのCMS」をコンセプトに、世界で圧倒的なシェア率を誇っていて、企業だけでなく個人ブログなどにもよく利用されています。

また、WordPress 5.0からはGutenbergというブロックエディタを採用していて、今後アップデートを重ねて最終的には、サイトをプレビューしてその中でコンテンツの編集が可能になる予定です。
これも「みんなのためのCMS」のコンセプトからきている1つの例です。
 

シェア率の違い

シェア率はDrupalが1.9%なのに対して、WordPressは64.4%です。
CMSを利用しているサイトの3分の2はWordPressでできていることになります。
参考:Usage Statistics and Market Share of Content Management Systems, May 2022

これはDrupalが特別低いわけではなく、他のCMSのシェア率も3〜1%ほどなので、WordPressだけが異常なシェア率になっています。

ただし、大規模なサイトにはDrupalが使われていることの方が多く、下記のような世界的に有名なサイトもDrupalを利用しています。

NASA: https://www.nasa.gov/
UNESCO: http://uis.unesco.org/en
TESLA: https://www.tesla.com/

逆にWordPressは個人ブログや小規模なサイトで利用されていることが多いです。
CMSによっての向き・不向きもありますし、作るサイトによってどのCMSを使うべきか見極める必要があります。

また、制作側の視点だとシェア率の違いが、そのまま日本語情報の量に影響してしまいます。
やはりシェア率の高いWordPressの方が、日本語の情報は多いですし、大抵のことはヒットします。
 

機能的な違い

どちらも本体機能は最低限で、そこにDrupalの場合は「モジュール」、WordPressの場合は「プラグイン」で機能を拡張できるようになっています。

Drupalは大企業にとって必要な機能をデフォルトで備えている

Drupalはウェブサイトに必要な機能がコアモジュールとして用意されていたり、多言語対応や承認ワークフローなどの機能が本体に備わっています。

  • ユーザーグループ・権限設定
  • 多言語対応
  • 承認ワークフロー
  • ファイルの閲覧制限

コンテンツの管理やワークフローを整備して運用するために必要な機能がデフォルトで入っているので、運用を考えるとDrupalの方が安心です。
 

WordPressはプラグイン前提

WordPressの本体機能はかなり少なくなっています。
実際に使ってみると「このレベルの機能も、公式の本体機能ではなくて第三者が作成したプラグインを入れて実現するの?」というものが結構あります。

  • 固定ページやカテゴリの並び替え
  • 権限やワークフローのカスタマイズ
  • キャッシュ機能

他にも、お問い合わせフォームが本体機能としてありますが、かなり使い勝手が悪いので「Contact Form 7」や「MW WP Form」といったプラグインを使うのが主流になっています。

編集画面

DrupalはCKEditor 4というWYSIWYGエディタです。
次期バージョンのDrupal 10ではCKEditor 5.0になったり、エディタ回りのアップデートが目玉の1つになっています。

WYSIWYGエディタでコンテンツを作成イメージ

 

WordPressの場合、バージョン5.0以降はGutenbergというブロックエディタです。それ以前はWYSIWYGエディタ(クラシックエディタ)で、プラグインをインストールすることで5.0以降もWYSIWYGエディタに変更できます。

 

ブロックを追加してコンテンツを作成するイメージ

 

コンテンツの分類

DrupalとWordPressでのコンテンツの分類は、それぞれ下記のようになります。
 

コンテンツ Drupal WordPress
「会社概要」などのページ 基本ページ 固定ページ
ブログなどの1つ1つの記事 記事 投稿
「ブログ」などの記事を投稿する場所を追加する カスタムコンテンツタイプ カスタム投稿タイプ

 

多言語対応

Drupalでは多言語対応が標準機能として備わっていますが、WordPressはプラグインが必要があります。

有名な多言語プラグインに「WPML」がありますが、これは有料のプラグインで、最初の1年に29ドル、年間更新で21ドルかかってしまいます。
他にも言語別にサーバーを分けるなどの方法もありますが、どれも運営コストが大きくなってしまいます。

ただ、WordPressもGutenbergのアップデートで最終的には多言語対応も可能になる予定のようです。
現時点では、標準機能として備わっているDrupalの方が多言語対応は優勢です。
 

キャッシュ機能

Drupalはキャッシュ機能も標準で高機能なものが備わっています。
キャッシュメタデータと呼ばれるデータを利用しながら、細分化して生成し、更新があった場合は影響を受けるキャッシュだけクリアします。

単純な構成のサイトであれば特別な設定なく軽快に動作します。

それに対してWordPressはプラグインで対応します。
有名なプラグインだと「WP Super Cache」や「WP Fastest Cache」がありますが、WordPressのキャッシュ系プラグインはインストールに注意が必要です。

WordPressには、プラグイン同士の相性があり、「このプラグインをインストールしたら他のプラグインが動かなくなった」なんてことが起こります。
キャッシュ系のプラグインは、その可能性が他のプラグインに比べて高いです。

自動アップデート機能

Drupal9からはセキュリティリリースの自動アップデート機能に対応しています(それ以前のバージョンは未対応)。

WordPressはマイナーアップデートの自動アップデートや、各プラグイン1つ1つ自動アップデートするか設定できます。

この辺りに関しては、細かく設定できるWordPressの方が進んでいます。
ただ、プラグイン同士の相性や、CMS本体のバージョンにプラグインが対応しているかどうかなども考える必要があるため、気軽に自動アップデートは使えないのが実際のところです。

承認ワークフロー

Drupalでは複数のワークフローを設置して使い分けることができたり、ステータスや遷移をカスタマイズできます。

ワークフローとは、例えば記事を書いて「下書き」にし、「承認依頼」を出して承認者が確認して、承認したら無事「公開」のような一連の流れのことで、そのワークフローを組織に合わせてカスタマイズできます。

承認ワークフロー、記事公開までのフローイメージ
 

それに対してWordPressは、ユーザーごとに権限を設定して記事の公開可能なユーザーを指定したり、「レビュー待ち」ステータスがあるレベルです。
実装で項目を増やすことは可能ですが、細かいカスタマイズはできません。

また、ワークフローのような機能もないため、ステータスを変えながら運用でカバーすることになります。

セキュリティの違い

Drupal には専門のセキュリティチームがあり、Drupal本体やコアモジュールだけでなく、一部のコミュニティモジュールにもセキュリティチェックが行われています。
そしてコミュニティモジュールに脆弱性が見つかったときは、被害を最小化するための体制が整っています。

他にもDrupalでは様々なセキュリティ対策をしています。
詳細は過去に記事にしているので、気になる方はぜひそちらもご覧ください。

関連記事:Drupalのセキュリティ・脆弱性について

それに対して WordPress は「プラグインはあくまで制作者のもの」という考え方が強く、Drupal ほどの体制が整っていません。
悪意あるプラグインをインストールしてしまい、被害にあう可能性はWordPressの方が高いです。

また、悪意はなくともプラグインをインストールしたことで起こるセキュリティ的な問題のリスクも高いです。
実際にお問い合わせフォームプラグインで有名な「Contact Form 7」の特定バージョンで脆弱性が確認され、話題になりました。
参考:Contact Form 7 5.3.2 | Contact Form 7

有名なプラグインだったのですぐに修正され、バージョンアップで解決しました。
しかし、プラグインによってはそもそも気づかれない可能性や、なかなか修正されずにプラグインのアップデート待ちになる可能性もあります。
このあたりはDrupalの方が体制が整っているため安心できそうです。
 

EOLに関して

基本的にCMSは新しいバージョンを保つのがセキュリティ的に重要です。
とはいえ移行期間も必要なので、Drupalでは「EOL(End of LineやEnd of Lifeの頭文字)」というサポート期限が明確になっています。
参考:Drupal 7, Drupal 8のサポート期限(EOL)とDrupal 9のリリース予定 | 株式会社メタ・インフォ

それに対してWordPressは、最新版以外に保証はないとされています。
ただ、保証はないと言いつつ、古いバージョンのセキュリティーアップデートも行われています。

Security updates will be backported to older releases when possible, but there are no guarantee and no timeframe for older releases. There are no fixed period of support nor Long Term Support (LTS) version such as Ubuntu’s.
セキュリティアップデートは、可能な場合は古いリリースにバックポートされますが、古いリリースの保証や期間はありません。固定期間のサポートも、Ubuntuのような長期サポート(LTS)バージョンもありません。
Supported Versions – WordPress.org Forums

また、プラグインの相性やバージョンに対応しているかどうかの問題もあり、本来はよくないのですが、使用プラグインが多ければ多いほどアップデートせずに古いまま使われていたりする場合が多いです。
 

アクセシビリティの違い

アクセシビリティ的な観点では、Drupalの方が一歩先を行っています。
Drupalに標準実装されているすべての機能がW3C(World Wide Web Consortium)ガイドライン(WCAG 2.0 / ATAG 2.0とWAI-ARIA)の準拠を保証しています。

それに対してWordPressは、Webアクセシビリティチームが現在アクセシビリティガイドラインのハンドブックを作成しています。
まだ作成途中なので、今後に期待です。
 

まとめ

Drupalはある程度必要な機能がデフォルトで備わっていて長期的なメンテナンスが容易、さらにはセキュリティやアクセシビリティの取り組みも一歩先を行っているので大企業向き。

WordPressはプラグインが豊富でそれらを組み合わせて機能の追加が容易ですが、その分バージョン管理などのメンテナンスが大変になってしまったり、セキュリティ的な懸念点はDrupalよりも大きくなります。

どちらも無料で利用可能ですが、その後の運用・保守など長期的なことを考えて適切に判断するようにしましょう。

また、弊社モチヤにはDrupalの開発経験が豊富な技術者が多数そろっています。
CMSに関しての判断が難しい場合や、Drupalについて分からないことがある場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
 

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