【イベントレポート】PHP Conference 2025

梅木 和弥
【イベントレポート】PHP Conference 2025のメインビジュアル

2025年6月28日、東京・大田区で開催された、「PHP Conference 2025」に現地参加してきました。
本記事では、現役PHPエンジニアの視点から、イベント全体の雰囲気や、特に印象に残ったセッション・学びについてレポートします。

一緒に参加した同僚も別の視点からレポートを書いていますので、こちらの記事もぜひ。

概要

日付 : 2025/6/28(土)9:30 ~ 17:35
場所:大田区産業プラザPiO

イベント全体の雰囲気

イベントの様子。

基調講演(キーノート)のみにならず、スポンサー提供のノベルティ配布、ジョブボードでの転職・採用情報、スポンサーブースでのスタンプラリー、懇親会(有料)など、多数の体験を得られるイベントです。

セッション内容だけでなく、キャリアアップや人脈形成の場としても充実しており、「技術だけでない学び」が詰まった1日だったと感じます。

印象に残ったセッション

「Chatwork」の認証基盤の移行とログ活用によるプロダクト改善、セッションの様子。

どのセッションも非常に興味深く、学びの多い内容ばかりでした。
本レポートでは、特に印象に残った3つのセッションについて、概要と簡単な感想をまとめています。

なお、公式サイトには各セッションのスライドが公開されていますので、参加された方の振り返りはもちろん、当日ご参加が難しかった方にもぜひご覧いただきたい内容です。

ちいさくPHPUnitをつくり、仕組みと拡張ポイントを探る

スピーカー: asumikam さん

PHPUnit、毎日(?)使っていますよね。  
直接コマンドを叩いたり、便利なツールを介して使っていたりするかもしれませんが、  
その中身に目を向けたことはありますか?
まずは、PHPUnitを「ちいさく作ってみる」ことで、その仕組みをひも解きます。  
最低限必要な機能は何か?「最小限のPHPUnit」を作って **実際に動かしながら** デモを行います。
その後、実際のPHPUnitと見比べ、どこに拡張の余地があるのか、また拡張の余地をどのように設計しているのかという部分を整理していきます。  
これらは、自分たちの作るシステムにおいても「拡張の余地」の嗅覚に役立てられるはずです。
「ちいさく作る」そして「じっくり理解する」ことで中身を想像する足掛かりにしていただければ嬉しいです。  
テストフレームワークの奥深さを一緒に覗いてみましょう!

本セッションは、PHPUnitにフォーカスを当てて「ライブラリの中身に目を向けること」「ちいさく作ってみること」を伝えるセッションでした。

アサーション実装における抽象化(例:Strategyパターンの適用)や、「迷ったら疎を選ぶ。密にはいつでもできる」といった設計思想の紹介など、設計の本質に迫るアプローチが非常に印象的でした。

具体的なコードを見ながら抽象的な理解へ導く構成も素晴らしく、テストフレームワークに限らず新たな視点を得られたセッションでした。

PostgreSQLのRow Level SecurityをPHPのORMで扱う Eloquent vs Doctrine

スピーカー: 菱田裕美 さん

PostgreSQLにはRow Level Securityがありますが、PHPを使った開発プロジェクトではほぼ使われていないのではないでしょうか。  
Row Level Securityを使ってLaravelでアプリケーションを開発するにあたって、私はEloquent ORMとDoctrine ORM両方でコードを書いてみて、開発者体験を比較検討してDoctrineを選択しました。どういう判断でDoctrineを選んだか、2年半に渡って実際に開発に使ってみてどうなったかを共有します。
  • Row Level Securityとはどんなものか
  • EloquentでRow Level Securityを扱う方法の解説
  • DoctrineでRow Level Securityを扱う方法の解説
  • Eloquent vs Doctrine そして結論

両ORMともビルダーパターンを採用している点で、拡張性や柔軟性には一定の共通点があると思いますが、アクセス制御を主軸にした開発体験の比較と、設計判断の背景にあるリアルな議論を聴くことができました。
アクセス制御を課題とした際の選定に伴うお話や、現場での雰囲気等をお聴きできました。

弊社でもよく話題に上がる「スキーマモデリング vs ロジックによる制御」について照らし合わせながら、選定軸等を拝聴していましたが非常に参考になる内容でした。 特に、Row Level Securityポリシーを用いたスキーマレベルでの制御と、ORM側でのマッピング戦略の組み合わせは、今後の設計検討において取り入れていきたいと感じました

 「Chatwork」の認証基盤の移行とログ活用によるプロダクト改善

スピーカー: 山下 賢治 さん

kubellでは日々100万人以上のユーザーが「Chatwork」にログインし、アプリケーションを利用しています。  
このセッションでは、「Chatwork」の認証基盤をAuth0へ移行し、運用を行っている実際のプロセスを詳しく紹介します。  
Auth0への移行方法とPHPでの実装における工夫について具体的に解説します。  
また、ログデータを活用した異常検知やビジネス分析の手法についても触れ、データを活用したアプローチについても紹介します。

Auth0導入の背景と、移行における非機能要件(セキュリティ、スケーラビリティなど)への対応、そのうえでのPHPでの工夫について実践的に学ぶことができました。

後半では、認証ログを活用したビジネス改善施策や設計的な工夫にも言及されており、テクニカルな観点に加えてビジネス視点でのプロダクト改善についても多くの気づきがありました。 開発と運用の垣根を越えて価値を届ける、という姿勢が印象的でした。

感想

PHP Conferenceへの現地参加は2度目でしたが、昨年以上に得るものが多い1日でした。
実践的な設計やテスト、認証基盤、ログ活用まで、幅広いテーマに触れられるこのイベントの価値を改めて実感しています。

また、同僚とも話しましたが、イベントへの現地参加を通して「自分の枠を越えた考え方や文化」に触れることで、視野が広がる感覚がありました。
閉鎖された場での意見交換はよくないな、と少し焦った所です...。

最近はオンライン参加も一般的ですが、「現地でしか得られない熱量」や「文化にふれることができる機会」の価値を再認識するきっかけにもなりました。

梅木 和弥/ Drupalエンジニア

Webのシステム開発における、設計・実装に携わっています。
業務ドメインを技術に翻訳する工程に注力しております。SOLID原則が僕の物差しです。

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